chirohage’s blog

もんじゃ日記

東名高速煽り運転事件 個人的まとめ

以下、文書は個人的にまとめたものであり、私見が含まれているものとする。

 

判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/745/088745_hanrei.pdf

 

<登場人物>

A 被害者母親

B 被害者父親

C 15歳子供

D 11歳子供

E 被告人

F   トラック運転手

 

<事件の概要>

パーキングエリアにおいて、Bが被告人運転者スライドドアを開けて「邪魔だ、ボケ。」と怒鳴って駐車方法を非難した。

(1)これに憤慨した被告人はB運転車両を停止させて文句を言おうと考え、B運転車両を追跡し、4度にわたって危険運転行為を繰り返し、停止させた。

(2)被告人は両車両が停止したあと、降車し、B運転車両窓側からBの胸倉をつかみ、Bに対して「けんか売ってんのか。」「海に沈めるぞ。」「車の方に投げるぞ。」「高速道
路上に投げてやろうか。」「殺されたいのか。」などと怒鳴りながら車外に引っ張り出そうとしたり、上半身を乗り入れてBを押し倒したりした。

これに対し、Bは「けんか売ってません。すみません。」などと謝罪した。

(3)Fは大型貨物自動車を運転し、前方大型トラックに追従して運転していたところ、前方大型トラックが急に車線変更をし始めた。

Fは前方大型トラックの前にB運転車両等を確認し、急ブレーキをかけ、ハンドルを切るが間に合わず、B運転車両に衝突しA,Bが死亡、C,D,Eが負傷した。

 

<争点>

①直前停止行為が危険運転致死傷罪の構成要件に該当するかどうか。

 検察官は4度の煽り運転から直前停止行為までをまとめて危険運転と解し、危険運転致死傷罪の実行行為であると主張するが、裁判所はこれを認めなかった。

裁判所は、4度の煽り運転は同罪の実行行為に該当するものの、直前停止行為は該当しないと考えた。

理由は、自動車運転処罰法2条4号所定の"重大な交通の危険を生じさせる速度"に直前停止行為が当てはまらないと考えたからだ。

なぜかというと、"重大な交通の危険を生じさせる速度"とは、一般的に約20㎞ないし30㎞程度であると解され、直前停止行為、つまりは0kmで停止することがそれには当てはまらないと考えたからだ。

これに対し検察官は、最低速度が法廷され、停車が禁止されている高速道路においては条件を満たすと主張したが、当該行為には車両を走行させていることが条件であるとして認めなかった。

よって、直前停止行為は同罪の実行行為ないし構成要件には該当しないものとされた。

 

②因果関係の有無

弁護人は、直前停止行為が実行行為に含まれないとしても、本件では被告人の4度の妨害運転に内在する危険がCらの死傷結果に現実化したとはいえないから因果関係は認められないと主張した。

まず、事件のおさらい。

①4度の妨害運転→②直前停止行為→③暴行→④トラックの衝突

弁護人は①の行為から④が誘発されたとは考えにくいことを主張したが、横浜地裁は、本件事故は,被告人の4度の妨害運転及びこれと密接に関連した直前停止行為Cに対する暴行等に誘発されて生じたものといえる。
そうすると、Cらの死傷結果は、被告人がB運転車両に対し妨害運転に及んだことによって生じた事故発生の危険性が現実化したにすぎず、被告人の妨害運転とCらの死傷結果との間の因果関係が認められる。

よって、因果関係を認め、危険運転致死傷罪が成立すると判断した。

 

私見

因果関係の認め方に無理があると考える。

4度の妨害運転によって危険性を発生させ、そのあとの行為によって実現させれば全体的に因果関係が認められるという見方は、過去の因果間関係の認め方から見てもやや無理がある。

因果関係を認めるにはいろいろな条件があるが、ここで問題となるのは行為と行為の間の時間だろう。

危険運転致死傷罪には走行が必要であると裁判所は認めながら、③の行為、つまりは暴行罪になるべき行為も因果関係内に入れていることから、裁判所は①と④の間には因果関係が切れるに相当する時間があると解していると思われる。

それにもかかわらず、①~③を1個の行為と考え因果関係を認めることは無理があると思う。

よって、この結果は民意や裁判員の感情を過剰にくみ取った結果であると考える。

 

<最後に>

条文がなければ新たに設置するよう騒ぐのではなく、既存の法律を拡張して認めさせるよう働きかける国民感情をくみ取る行為は人の支配に当たる。

法律というものは常に、現実の後追いである。

 

犯罪者をいかに重く処罰するかを考える前に、行うべきは立法だと私は考える。

高裁判決が12月に出るので、楽しみだ。