chirohage’s blog

もんじゃ日記

LOLから学ぶ期待可能性

【事件の概要】

https://matchhistory.jp.leagueoflegends.com/ja/#match-details/JP1/194490911/201229731?tab=overview

(1) 被告人topレーナ―(以下トップ)はbot側集団戦にtpがあるにも関わらず参加しなかったことを理由に、ベトナム人midレーナーにハテナpingやアイコンタッチ、また、ベトナム語によるチャット連文を受けた。ベトナム語なので何を言っているかわからなかったが、他挙動によりこれを暴言であると推測したtopレーナ―は英語で「ベトナム人によりひどい精神攻撃をうけた、このままゲームを続行していたら控えるバイトに多大なる支障をきたすためこのゲームからは離脱する」と言って当該ゲームを離籍した。

(2) 第1審、即時評価システムはトップレーナ―のみを永久BANに処することを決定した。

(3) トップの言い分はこうだ「俺は何も言われなければ離籍することもチャットすることもない、逆に見方がフィードしても気にしない性格をしている。皆フィードするときもあればキャリーするときもあるという考えであるからだ。なので、因果関係上(あれなければこれなし論)当該行為はミッドレーナーによる煽り行為がなかればまず発生しなかったと思われる。そもそも、ケイルが開いていることからおかしい、俺はOPであるアーゴットをBANしていたにもかかわらず、他レーナーがBANしたのはヤスオ/ジャックス/ルシアン/ルブランだ。ルブランはまだわかる、普通に強いしだいたいのレーナ―に対応できるからだ、しかし他3人は問題である。とし、ケイルを開けたチームに対して不満を抱えていた。

「ケイルは序盤が弱い、そのケイルがレベル1~11まで一生プッシュしていたにも関わらずガンクは0回であった、こちらは相手ケインにより2回ほどガンクをされている状況であった。ハラスも無限にされ、11分時点でねこばばにより稼がれていた合計金額は約800ゴールドに及ぶ。」としチームに対する不満感は試合が進むにつれ募っていった。

「また、ここには期待可能性もない、それはLOLプレイヤーを見ていればわかることである。煽られたものが煽ったものに対してある程度の自己救済行為を行うことは予測可能であり、その選択肢をとってもおかしくないと思われるからだ。上記した因果関係も含め考慮すると、少なくとも永久BANには達しないと思われる。」

 

【期待可能性とは】

 

期待可能性とは、ある状況の下で行為者が違法行為をやめて適法行為に出ることを期待し得ることをいい、刑法の規範的責任論の核をなす考えである。

刑法規範に従った動機付けの制御を困難ないし不可能とする行為事情があったことを理由として、責任の減少ないし阻却を認める。

例えば、正当な理由で現在お金がないにもかかわらず、税金を払えと言われている状況下で、その税金の支払いを滞納する、などが期待可能性なしの事例に当たる。

 

 しかし、現在判例では期待可能性の理論を明示してまっこうから認めたものはない。

学説からも、期待可能性を認めると刑法の軟弱化を招くのではないかと懸念されている。

以下条文、

刑法第36条(正当防衛)

  1. 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

刑法第37条(緊急避難)

  1. 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

刑法第104条(証拠隠滅等)

 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

刑法第105条(親族による犯罪に関する特例)

 前2条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。

 

上記条文中には期待可能性の理論が含まれていると考えられる、しかしながらすべての犯罪において期待可能性を考慮する旨の総括された規定はないため、期待可能性による減刑や不処罰を当然に認めてもよいのかも議論の対象となる。

 

 

【争点】

期待可能性についての争点は、①「期待可能性を認めてもよいか」②「期待可能性を認めるとした場合の判定基準はどうなるか」の2つに大別できる。

 

 

以下、学説を挙げるがここは刑法議論の場ではないため通説以外は考察しない。

【責任の内容ーー心理的責任論・規範的責任論】

1、心理的規範説

「責任の内容は、行為者の責任能力のほかに、故意、過失という心理状態のいずれかが存することとされる」とする考えである。

 

2、規範的責任論(通説)

「規範的責任論は故意と過失とを統一する規範的要素として、行為者における適法行為の期待可能性の存在を要求し、責任能力および故意・過失が存在しても、期待可能性がなければ責任がないとする説」

 

3、可罰的責任論(有力説)

「規範的責任論の中に「刑罰目的、とくに予防的視点を考慮することによって、刑罰に値する責任か否かを判断する。」とする考えを加える論である。

 

今回の事例を通説に当てはめると、行為:故意 期待可能性:なし なので責任はないように思える。

 

【期待可能性の学説】

1、期待可能性の体系的位置付け

(1)故意・過失要素説

「期待可能性は単に責任の有無の問題として考えるならば、期待可能性の不存在を消極的責任要素と解するのが思考経済上すぐれている。しかし、期待可能性は責任の有無のみならず程度をも定める要素である。期待可能性が存在するかどうかは、それがどの程度存在するかとともに、積極的に責任要素として考慮しなければならない。したがって、期待可能性は、故意責任、過失責任の積極的要素と解するべきである。」

 

(2)責任要素説

「責任を積極的に基礎づけるのは違法性の認識ないしその可能性であって、それがあったにもかかわらず、なお適法行為にでることが期待できなかった場合にははじめて責任が阻却されるので期待可能性の理論は責任を限界づける機能をもっている。」

 

(3)責任阻却事由説(通説)

「期待可能性は「可能性」の問題であることからすれば、純粋に規範の問題としてとらえることは適当でないように思う。期待可能性は、適法行為に出ることの「可能性」の問題であるが、それは、具体的事情に置かれた行為者の立場をどのように評価・判断するのかというものである。したがって、行為が適法であったとしても、期待可能性がなければ責任を阻却することになるから、規範の問題とは異質のものである考えなければならないので、これを責任の段階で論ずるのが妥当であろう。その意味からも、責任阻却は刑法典に規定のある場合だけに限るべきではなかろう。もっとも、期待可能性が欠けるという場合に、責任が阻却されるという刑法上の規定はない。期待可能性の不存在は、一般的な、超法規的責任阻却自由と解するべきであろう。」

 

ここでも同じようなことを言っているので省略。

 

2、期待可能性の判定基準

 

(1)国家標準説

「当該行為事情のもとにおいて国家(ここではriot)が何を期待しているかを標準とすべき」とする説

批判:「国家市場主義の立場を取らない限り、国家の期待とは一般人の期待であると解するかぎり、一般人標準説に還元される」

 

(2)一般人標準説

「一般人に了解可能な動機にもとづく場合のみ(いいかえれば、その行為事情の下におかれた一般人でも同様に動機付けを生業することが困難な事情があったと認められる時のみ)責任減少を肯定しえる。」とする説

批判:①当事者の立場を考慮しえない点で妥当でない

   ②「行為者に期待不可能なときは批判を加えることはできない」

 

(3)行為者標準説

「行為の当時における具体的事情のもとで、行為者に適法行為をなしうる可能性があったか否かを標準とする」説

批判:「行為者が犯罪に恥ったということは思いとどまる期待可能性がなかったということであって、「本人を基準にすることはすべてを許すことである」

 

 

私見

責任では責任阻却事由説を取り、判定基準で一般人標準説を取る。

今回の事例での被告人は煽られなければ至って温厚なプレイヤーであり、前述した因果関係を含め考慮すると被告人に責任を求めるのは妥当ではないように思える。

そのうえ、全LOLプレイヤーにおいては、試合中煽れば何かまずいことが起きる、ということは既知の事実である。よって、今回の反撃行為も一般人を標準にしても無理もない行為であると解される。

以上を踏まえると永久BANという処罰はありえないものであり、チャット制限まで減刑するのが妥当であると思われる。